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夢を繋ぐ

「メタンハイドレート」という物質を知っていますか?
メタンハイドレートとは、都市ガスの主成分であるメタンという物質が水と結びつき、氷のような状態で地中に存在している物質で、地中から取り出せば天然ガスと同じようにエネルギー資源として利用できます。海底には大量のメタンハイドレートが埋蔵されているため、とりわけ資源の乏しい日本では「次世代のエネルギー源」として大きな期待が寄せられており、愛知県沖の海底で、世界ではじめてメタンハイドレートの採掘が開始されるというニュースが報道されました。
この世界初の採掘作業を行うのは、JAMSTEC(海洋研究開発機構)の探査船「ちきゅう」。「はやぶさ」プロジェクトで一躍世界に名をとどろかせたJAXA(宇宙航空研究開発機構)には「知名度」の点では及びませんが、海洋資源の探索だけではなく、深海の生物の研究は恐竜絶滅以前の生態系や、さらには生命の起源の解明にもつながる貴重なものですし、なにより「地震の巣」の上に住んでいる私たちにとって、地球内部のマントルやプレートの研究は「明日の我が身」に関わる火急の課題です。JAMSTECはこうした一連の研究・調査において世界の最先端を行く研究機関なのです。

「ちきゅう」のニュースが流れているとき、朱野帰子さんの『海に降る』(幻冬社)の話を思い出しました。JAMSTECの若手研究者が未知の海洋生物の研究に挑む「海洋冒険小説」なのですが、「口だけが巨大化し他の部分がミイラのように細く縮こまっているフクロウナギ」とか「口もなく骨もなく内臓のきれはしのような体に粘液をまとったヌタウナギ」のような摩訶不思議な生物が登場する小説です(´▽`)

この本のなかで主人公の一人が、海洋生物学者であった亡き父親の思いを胸に、こんな言葉を投げかけます。
JAMSTECの一般公開イベントに集まった子どもたちに、そして読者に向けて。
「今日、会場にきてくれた子供たちみんなに質問します。
君たちには夢がありますか。そのためだったら、どんなに頑張ってもいいと思えるような、そのことだけを考えるだけで毎日がきらきらと輝いて見えるような、そんな夢が」
彼は、「海洋研究は税金で賄われているのだから、何の役にも立たない深海生物の研究より、資源開発に専念すべきだ」と主張する政治家に対して、こう反論します。
「資源は費やしてしまえば終わりです。しかし人類がまだ足を踏み入れぬ深海底に潜り、未知の生物を探すという夢は、今ここにいる子供たちに、枯渇することのない莫大なエネルギーを与えてくれるのではないでしょうか。まだ終わってなどいない、これからはじまる物語を次世代に引き継ぐことこそが、僕たち大人が果たすべき責務なのではないでしょうか

「夢を繋ぐ」こと。それこそが僕たち大人の最大の責務であるということ。

私たちにとって、実際に何の役に立つのかわからないフクロウナギやヌタウナギの話、絶滅した太古の生物や、「はやぶさ」や「ちきゅう」の話。
目の前にいる子どもたちが、先人たちの思いを受け継ぎ、私たちの世代が解き明かすことのできなかった様々な「謎」を解明してくれるような、そんな大きな人間になってくれること。
目標達成のためなら、どんなに頑張ってもいいと思えるような、そのことだけを考えるだけで毎日がきらきらと輝いて見えるような、大きな夢をもった子どもたちを育てていくこと。

目の前には、安保問題やオリンピック問題、目の前には多くの問題があります。
そんな状況下でも、子どもがキラキラと目を輝かせ頑張れる環境、それを作ってあげることが、やはり大人の責務だと感じます。


『あきらめない奴には、誰も勝てないんだ』
ベーブ・ルース

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